2006年10月07日
ある料理人の思い出

昨晩ふと、フランスで仲良くなった友人のことを思い出しました。彼の名はヨウスケ。渡仏して間もない頃に知り合い、3週間で彼は帰国したのですが、すごく良い出会いだったと思います。
渡仏当時、フランス語が全くできなかった自分は一番初心者のクラスに入れられ、ヨウスケとはそこで知り合いました。自分もクラスではフランス語が出来ないほうだったのですが、彼の成績はさらに悪く、先生が付きっ切りで教えないといけない時もありました。ヨウスケは日本料理の修業をしており、4月から箱根の温泉旅館で板前として就職が決まっており、その前にフランスに1ヶ月滞在してフランスの料理を見てみたいということでパリに来てたのです。
ある日、男3人で歩いてると、ヨウスケが「ちょっとまってて!」と、小さな売店に駆け込みました。新聞やら雑誌が売ってる小さな店です。そこで一冊の本を買ってきたのです。彼は中をみて「あー!しまった…」と肩を落としました。話を聞くと、彼が求めてたのはいわゆる洋物のHな本。なんとなく露出の多い女性が表紙に載ってたので、「これだ!」と思ったようです。しかも、彼は女性の裸体を見て、料理の盛り付けなどのイメージを膨らますために探してたと言うのです。でも、なんとなく彼ならやりかねないなと思いました。
語学学校に通って1週間たった頃、彼は3週間受講するコースだったのですが、「Le Cordon Blue」という有名なフレンチの学校の体験コースに行き、いたく感動したようで、残りの語学学校2週間を辞めて、小さなビストロ(レストラン)でもいいから働きたいと思い始めたのです。2週間分の授業料は当然返ってこないとのことで、まわりの友人は反対する人も多かったです。でも、自分は強く勧めました。そして彼は2週目から行方不明になり、学校にも姿を見せなかったのですが、帰国の3日前にようやく学校に来てくれました。彼はレストランやビストロにフランス語がほとんど話せないのに「働かせてください!」と何軒も頼み込み、結局全部断られたけど、ホームステイ先のホストマザーの知り合いの店で下働きさせてもらえたようでした。大変だったけど、すごくいい経験だったと言ってました。ヨウスケは物事を変態的に捉えることができるというか、とにかく不思議な感覚がありました。そして、そんなとこが自分を惹き付けました。
渡仏して1年経ったころ、自分は名古屋に戻ってきました。そして、帰国して1週間後あたりに突然ヨウスケから電話があったのです。
「タカヒロさんですか?フランスでお世話になったヨウスケです!覚えてますか?」
そろそろ自分が帰国する頃だと思って、電話したと言ってました。この時は本当にうれしかったです。彼は箱根の温泉旅館の板前として、順風満帆なようでした。自分は帰国して約1年後にメトロポリタンをオープンさせたのですが、彼は携帯を解約しており連絡がつかなくなって、店を出したことを未だ伝えられてないのが心残りです。

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